Memory Puzzle
お父さんは、ショートケーキに付いているフィルムをフォークで綺麗に剥がしケーキを口に運んだ。
「うまいなぁ。」
お父さんは、そう言いながら食べる。
「お母さんがいた頃はよくケーキ食べてたよな〜。本当に懐かしい。」
ふと呟いたお父さんの言葉に時音は、肩身が狭く感じていた。この家族の中で、バラバラになる前の幸せな時間を私は覚えていない。と…。
時音は、はぁ。とため息をつくと、お父さんが完食したケーキの皿を洗い始めた。
「時音。お父さん、今とても気分が良い。これからお父さんの部屋に来てくれないか?先に行ってるから来いよ。」
その言葉を残し、お父さんは部屋を出た。さらりと皿を拭き棚に収めると、時音もお父さんの部屋に行った。
「時音、ここに座りなさい。」
お父さんは、自分が座っていたベッドの横を指差した。時音はお父さんの隣にオズオズと座ると、お父さんが時音の顎をクイッとした。時音は、ビクッとして逃げようとしたがお父さんの圧力で動けない。
「鈴音にそっくりだ。」
お父さんは、そう呟くと時音をベッドに押し倒す。時音は驚いた。なぜお父さんはこんな事をするのか、なぜお父さんはこんな事をするようになったのか、なぜなぜなぜなぜなぜ?
時音はお父さんの腕の無い方を力強く押した。その瞬間、お父さんはベッドから転がり落ちた。お父さんは“痛い”と言いうずくまる。その隙に時音はドアを開け、お父さんの部屋から逃げる。だが、後ろからお父さんの気配を感じ、時音は近くにあった部屋に駆け込み鍵をかけた。
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