Memory Puzzle
そこまで言った所で、枯れてしまったと思っていた涙が溢れ出した。そして、いつの間にか強く握られた脚の上の拳に雫が落ちた。
言葉の続きを急かさずに、じっと待ってくれる。時音は一度深呼吸をして、また続けた。
「あの家に、帰りたくないの…。」
その言葉を言ってから、晃さんは何かを悩んでいるようだった。数分の時が流れた時、晃さんは話し始めた。
「それが時音の答えか?」
時音は涙で腫らした顔を、縦に揺らす。
「分かった。ようこそ、我が家へ。」
晃さんのその言葉に、時音は驚いた。きっと、追い出される。そんな悪い考えの方が大きかったからだ。時音は、いつの間にか人を信じられなくなっていた。
「これからは、家族として辛かったら言っていいし、その時は一緒に考えていこう。辛かったね。」
晃さんのその言葉に始め、驚いた顔をしていた愛衣さんも笑顔で頷いた。
「ありがとうございます。」
時音は、更に涙を流した。

次の日の朝、空は澄み渡る様な青さだった。
「おはよう。」
時音がリビングに顔を出すとみんな揃っていた。
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