Memory Puzzle
時音は、呆然としていた。やっぱり、女優など想像が出来なかった。バイトや仕事と言ったものを、今まで全くしたことの無い時音にとって、それは、恐怖でしかなかった。
「はい。」
その時、すばるくんがコーンスープを目の前に置いてくれた。
「雑煮、食べられなかっただろ。」
「うん。ありがと。」
コーンスープを一口飲むと、さっきの不安が溶けて無くなるような気がした。
「時音、結局どうするんだよ?女優、やるのか?」
「当たり前でしょ。やらなきゃ50万払わないといけないし…。」
せっかく無くなりそうだった不安が、また形を成していく。
「お前はやっぱりバカだな。」
時音は唖然とした。そんなことを言われるような事を、時音にはした覚えがない。
すばるくんは、いちど溜息をつく。
「あいつの前で、俺らの名前とか住んでる場所、一言も言ってないだろ。行きたくないと思えばスルー出来るんだよ。それで、時音はどうするんだ?」
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