Memory Puzzle
「何処行ってたの!?凄く心配したんだからね〜!ウワーン!」
時音は、泣き真似をしながら必死に演技をした。
「泣けてない。涙は何処に忘れてきた。さっきまで泣いてたのに、なんで泣けないんだよ。」
すばるくんは、溜息をついた。
「泣き真似なんてした事ないもん。」
「泣き真似じゃなくて、心から泣くんだよ。役になりきるんだ。」
時音は、ぐっと胸をつかれた。時音は、リビングの扉のドアノブに手を掛けた。
「何処行くんだよ。」
「私には、無理だよ。泣けない。」
さらにドアノブを、力強く握る。胸の奥には、焦りと悲しみと諦めが渦巻いていた。
「今更、遅いって。周りの子は、努力してあの場に行くんだよ!私は今まで何の努力もしてない。沢山誤解もしてたし…。」
時音とすばるくんの間には、気まずい空気が流れた。
「もう一つだけ、言ってなかった事がある。今回のオーディションは、一般公募もあって、それでエントリーしたんだ。この作品は人気作だったから、沢山の応募を見越して書類審査があった。でもそれと同時進行で、芸能人のオーディションも行なわれていて、3次審査で一般公募の人も混ざってするらしい。ただ、これが最後の審査。これで主演が決まる。」
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