Memory Puzzle
バッジの順に、1列に椅子に座った。目の前には難しい顔をした、男の人が2人資料と時音達を睨んでいる。
「では、始めます。5番から順に、名前、年齢、所属事務所、特技、私達の質問を答えてください。」
右側の男の人がそう言い、オーディションは始まった。刻一刻と時音の順番が近づく。時音は、この空間から一刻も早く逃げ出したかった。だが、時音にはそんな事をする勇気もない。それに、自分で決めたことを投げ出すのは、とても恥ずかしい事だと思った。
「次、10番。」
ついに時音の出番がやって来た。時音は、席を立ち一礼をする。そして、前の人に習い口を開いた。
「白波 鈴音、17歳、事務所は所属してません。特技は分かりません。」
時音は、ありのままに答えた。一瞬、周りからの視線を感じたが、スッと背筋を伸ばした。
「分からないって、どういう事?」
男の人の目がひかる。ここで嘘を付いたところで、時音にはメリットがない。
「はい。2機の飛行機が衝突した、大きな事故を覚えてますか。その事故に巻き込まれ、今は記憶が無いという事です。」
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