Memory Puzzle
時音はどきりとした。中村さんに聞いてはいたものの、もしかしたら無いのではないかという甘い考えを持っていたのだ。
「では、5番の方からしてください。」
「はい。」
そうして始まったフリーエチュード。時音は、必死で内容を考えた。だが、1つもいい案は浮かばない。もう、これまでだと思った。時音の前の人は、日々の練習を感じられる演技を堂々としている。

これは、負け戦。

そう思ってきた。
「次、10番。」
「はい。」
そう言って前に出たものの、何をしたら良いか分からなかった。とりあえず、膝をつき目の前に人が倒れている時のようにする。
「何で…。お母さん!」
時音自身、驚いた。勝手に言葉が溢れ出てきたのだ。
< 172 / 202 >

この作品をシェア

pagetop