Memory Puzzle
「何で!イヤっ!どうして〜。」
零れ落ちてくる言葉に、動揺する時音だったが異変に気がついた。腕の中に温もりを感じたのだ。それを感じた途端、頭の中に次々と記憶のかけらが溢れ、パズルの様に組み合わさっていく。
口の中に、海の味を感じた。
あの日海の上で、体中に怪我を負ったお母さんを片腕に抱え、漂流物にしがみついていた。でも、お母さんは一度も目を開けることなく腕の中で死んでいった。私は、その時限界を迎えていた。腕に力が入らず、意識を保つのもギリギリだった。
「お母さん、ごめんなさい…。ごめんなさい!」
そう言って、息絶えたお母さんを手放したのを覚えている。そして、それが最後の記憶。次に目を覚ましたのは、病室の中。私は、絶望した。こんな記憶なら、思い出したくなかったと…。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
気付けば、鳥肌と体中に汗をぐっしょりとかき、震えが止まらなくなっていた。
相変わらず、口の中には海の味が広がっていた。
「10番、もう良いですよ。」
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