Memory Puzzle
その言葉で、嫌だったフリーエチュードが終わった事を知った。複雑な思いを抱えながら、席に戻った。
いつまでもあの感覚が、消えない。腕の中で、徐々に冷たくなっていくお母さんの体。絶望しかなかった。もしかしたら、お母さんは死んでいなかったのかもしれない。そんな事まで考えるようになっていた。
「これで、全てを終わります。」
私は、チラッと陽菜さんの方を見る。目には涙が溜まっていた。陽菜さんはすでにフリーエチュードを終えていた。
研修室から出ると、中村さんとすばるくんが迎えてくれた。他の参加者も家族やマネージャーに迎えられていた。
「泣けたんだね。」
中村さんは意外そうな顔をしていた。その時に、私は泣いていることを知った。徐々に悔しさが私の胸を支配した。こんな筈じゃなかったのに…。
「やれば出来るんじゃん。」
すばるくんのこの一言に反論しようとしたが、泣きすぎて声が上手く出なかった。その分、すばるくんをポカポカと力無く殴った。
「なにしてんだよ!」
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