Memory Puzzle

次に左の男の人が口を開いた。
「僕は辻村です。本作品の、作者。よろしくね。」
そう言って、2人は手を差し出して来た。私達は握手を交わす。その後の出来事はあまり覚えていない。ずっと、あの時の事が無限ループの様に、頭の中でくり返された。
「では、そういう事で。ありがとうございました。」
そして、ただ一つ、分かっている事がある。それは、この映画に出る事は決定事項であるという事。
「ありがとうございました。」
ボーとしている間に、またたくさん聞き逃してしまった。だが、まあ後で中村さんに教えてもらえるだろう。
研修室から出ると、笑顔の中村さんと不機嫌そうなすばるくんが待ち構えていた。沢山の言葉を口々に言ってるけど、私の心には全く届いてはいない。音のない、モノクロ世界に居るような感覚に襲われていた。
それからどうやって一日を過ごしたか覚えていない。気づいた時には、ベッドの上で横になっていた。
次々に蘇る記憶が、私を苦しめる。