Memory Puzzle
「俺だ。」
入って来たのは、すばるくんだった。
「何で?」
「話したい事がある。」
そう言ってすばるくんは、私の横に腰を掛けた。
「俺さ、記憶無くしたって言っただろ?その時の話。」
いつものトゲトゲとした感じの無いしゃべり方で、語り始めた。
「俺、小さい頃から跡取りとして、勉強させられてきたんだ。父さんは厳しくて、母さんは優しかった。だから、言われた事は真面目にしてた。学校でも、成績はいつもトップ。スポーツも1番。いつの間にか、周りから嫉妬される存在。だからかな。中1のある日、俺は親友に、プールに突き落とされた。沈められて、忘れたい、そう思ったら記憶無くしてた。」
すばるくんは、溜息をついた。思い出したくもない記憶だろうに…。
「勉強も何もかも、皆について行けなくてさ。毎日、陰口とか罵りを受けた。でも、1番辛かったのは家族に裏切られた事。頼る存在が母さんと父さんだけだったのに、俺は婆ちゃんの家に預けられた。母さん達は、成績が落ちた俺を見捨てて、子作りまでし始めた。その時、俺は記憶無くしてたけど、捨てられたんだって薄々気づいてた。記憶が戻ってからは、家族を信頼したいのに、信頼できなくてすごく悩んだ。どうすれば良いんだろう?って。でも、何回も話し合って今では俺の夢も応援してくれてる。」
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