Memory Puzzle
すばるくんのその一言で、僕達は読み始めた。
そのノートは、「明日から夏休みだけど、予定ある?」という台詞から始まっていた。どうやら姉ちゃんの書いた小説らしい。ほぼノンフィクションで。というのも、勝手に僕達の心の内を想像で書いていたから。読んでいくうちに、僕達は懐かしい気持ちになっていった。だけど、知らなかった事も沢山あって、戸惑いながら、姉ちゃんの文字を1つずつ追っていった。読み終えた頃には、夕方になっていた。
「凄く複雑な気分だ。」
すばるくんも顔をしかめていた。
「記憶をなくす前と記憶をなくした後を分けて考えるなって言ったのに…。」
「どういう事だ?」
僕はすかさず声を上げた。
「始めと最後は、『私』。途中は『時音』。分けて考えてる。俺も記憶無くして、分けて考えてたからしんどかったんだよ。」
「そうなんだ…。」
「でもさ、ラストが適当過ぎないか?」
「確かに。記憶が戻ってからの内容がね…。なんで姉ちゃんそんな書き方にしたんだろう?」
「日記。」
僕とすばるくんは、秋くんを見た。確かにその手があったのだ。僕は、記憶が戻ってからの日記のページを開いた。でも、僕達は後悔する事になった。

私は母さんを殺した。この手で海に離した。
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