Memory Puzzle
そんなこと言われたら、断ることはできない。俺はおばあちゃんに連れられて、誰もいないプールに来た。
「なんで誰もいないの?」
「ええから、はよ見本見して。」
俺はおばあちゃんの顔を見つめた。
「分かった。」
少し体をほぐし、飛び込み台に乗る。もう一度おばあちゃんの方を見たけど、おばあちゃんは何も言わなかった。
俺は、自然といつもの姿勢になった。そして、足に力を入れた。徐々に近づく水。スッと息を止める。そして体を水と気泡が包む。気持ちいい。久しぶりの感覚に、気分が高ぶっていく。それと同時に、忘れていた記憶が頭のなかに流れ込んできた。苦しかった。それでも、泳ぐことを止めなかった。止めたら自分を見失うような気がしたから。
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