Memory Puzzle
「他のフロアも見ていかないか?」
食材の買い物を終えた所で、すばるくんが声を掛けてきた。
「でも、お昼ご飯遅くなっちゃう…。」
「良い。遅くなっても。」
それだけ言うと、フロアマップの前で立ち止まった。
「ここ、行きたいかな?」
時音は指を指して、すばるくんの顔を覗き込んだ。
「行った事無いから。行ってたとしても、記憶ないし。」
時音は、行った事が無いということに無性に恥ずかしくなって俯く。
「行こう。」
すばるくんは、歩き始めた。時音もその背中を見失わないように歩き始めた。
はたから見ればもしかしたらカップルにさえ見えるこの光景は、実は違う。そうであれば、どれだけ嬉しいことなのかと時音は感じていた。

私の記憶はどこへ行ったの?

そう呼びかけても、記憶の返事は聞こえて来なかった。
「ほら、何して遊ぶ?」
すばるくんの言葉にハッとして、まわりを見るとそこに着いていた。そう、時音が行きたかったのはゲームセンターだった。
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