Memory Puzzle
「その方がいいと思う。記憶を取り戻す可能性が少しでもあるなら。ごちそうさま。」
すばるくんは、そう言うと扉の前で止まり
「美味かった。」
と言ったように、時音は思った。
「片付けるか。」
時音は、席を立ち食器類を片付けた。

記憶のかけらを持ってるか…。そういえば、すばるくんが記憶喪失になった時のこと全然教えてもらってないなぁ。

食器類を棚に直すと上田家の電話を借りて、白波の家に電話した。
「もしもし、白波の家です。」
電話に出たのは彩さんだった。
「もしもし彩さん?時音だけど。お父さん居る?」
「時音?どうしたの?」
彩さんはびっくりした声で応えた。
「あっちゃいけない人に会ったかも知れないから。」
時音は、言葉を濁した。あんまり話したくない内容だったから。
「分かった。代わるね?」
保留の音楽が流れ始めた。ほんの数秒の待ち時間だったが、時音にはとても長く感じられた。
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