これを愛と呼ばぬなら
「ああ、そうなんですね。安心しました」

 具合が悪いわけではないと聞いて、ホッと胸をなでおろしていると、ふいに藤見さんが私に顔を寄せた。

「ふ、藤見さん……?」

 耳元に息がかかるほどの近さに、思わず身が竦む。


「美沙先生は、お優しいんですね。……悠祐が慕うはずだ」

 狼狽する私を見て口角を上げると、藤見さんはようやく顔を離して私を見下ろした。じっとりと湿った視線を感じ、ぞくりと肌が粟立つ。


「パパー、なにしてるの。早く帰ろう!!」

「ごめんごめん。先生と少しお話してたんだ。さあ帰ろうか。美沙先生、さようなら」

「さようなら……」

 さっきまでの不穏な気配は見事に消え失せ、藤見さんはすっかりお父さんの顔で、悠祐くんと園を出て行った。


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