これを愛と呼ばぬなら

 もう、限界だった。このままにしていて、なにかあってからでは遅い。
私は鈴木先生にも藤見さんのことを全て打ち明け、翌日の月曜日、園長に相談することにした。

 園児たちのお昼寝の時間、私は園長室を訪ね、ここ最近の出来事を打ち明けた。しかし園長の反応は、予想を裏切るものだった。


「藤見さんが? 何かの間違いじゃないの?」

「そんな、間違いだなんて!」

 いくら説明しても、園長は信じようとしない。

「潮月先生、ちょっと神経質すぎるんじゃないの?」

「そんなことありません! 昨日だって、ずっと後をつけられたんですよ!」

「そんなこと言って、先生の気のせいなんじゃないの?」

 むしろ『信じたくない』と思っているのが園長の表情からありありと窺えた。

 藤見さんの奥さんのご実家は、この辺りの土地を多く所有する有力者だ。
さらに藤見さんのお義父さん――悠祐くんのおじいさんは不動産業を営む資産家で、娘や孫がお世話になっているからと、なにかにつけ、園に寄付や物品の寄贈をしてくれている。

 こんなことが明るみに出れば、貴重な寄付が途絶えてしまうかもしれない。きっと園長は、そこを気にしているに違いない。


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