これを愛と呼ばぬなら
発表会当日の土曜日は、生憎の雨模様だった。
「美沙先生、おはようございます!」
「はい、おはようございます。勇人くん、ゆうべはちゃんと眠れたかな」
準備のため、いつもより少し早い時間に登園してくる子供達を笑顔で迎え入れる。真っ先に教室に入って来たのは、前日の練習中から、「なんかドキドキしてきた~」と騒いでいた勇人くんだ。
「ねえ美沙先生聞いて。今日ぼくんちみんな来るんだよ。お父さんとお母さんとおじいちゃんとおばあちゃんとお姉ちゃんとぜんぶ!」
興奮した声で、勇人くんが話しかけてくる。
「そうなんだ、みんな見に来てくれるなんてすごいね。勇人くんお歌も劇も頑張らなくちゃね!」
「うん、ぼくがんばるよ!」
勇人くんは大きな声で返事をすると、仲のいいお友達を見つけて走って行った。
緊張と期待のせいか、子供達もいつもより元気がいい。収集がつかなくなる前に一言声をかけようかなと考えていると、子供達の群れから一人離れ、教室の入り口で浮かない顔をしている悠祐くんを見つけた。