これを愛と呼ばぬなら
「あら美沙ちゃん、いらっしゃい。……何かあった? なんだか顔色が良くないわ」
「優子さんこんにちは。実は……」
私はまず、優子さんに仕事を辞めたことを伝えた。その経緯もかいつまんで。優子さんは自分のことのように悔しがり、慰めてくれた。
「優子さん、新井さんのことなんですけど」
一通り自分の話を終え、私は優子さんに新井さんと約束していたことを話した。
優子さんに尋ねたところ、あの日、新井さんは二時間ほどお店に滞在していたという。
指輪を返すから気持ちに一区切りつけた方がいいなんて私から偉そうなことを言っておいて、待ちぼうけを食らわせるなんて、彼には本当にひどいことをしてしまった。
「機会があれば、またお茶しましょうって言ってたわよ。約束のことは気にしなくていいって。あと、これをあなたに返して欲しいって」
新井さんは、私が貸した傘を優子さんに預けてくれていた。