これを愛と呼ばぬなら
「はい、潮月です」
『僕です、新井です。覚えてらっしゃいますか』
「……もちろん」
発した声は、かすかに震えていた。緊張しているのが伝わったのか、スマホの向こう側で、新井さんがフッと微笑んだような気配がした。
そうだ、せっかく向こうから連絡をくれたんだ。まずはあの日行けなかったことを謝らなくちゃ。
「あの、先日は申し訳ありませんでした。色々あって、新井さんとの約束を忘れてしまって……」
『そのことはもう気にしないでください。潮月さん、ライブラリーに伝言を残してくださったでしょう?』
「……ええ。それじゃ、この番号は」
『優子さんから教えてもらったんです。職権乱用して手に入れたわけじゃないので、どうぞ安心してください』
やはり新井さんは、私が受付にいることに気がついていた。
「新井さん、この会社の方だったんですね。すみません、私何も知らなくて」
考えてみれば、派遣先の社名は新井物産だ。でも、まさか新井さんに関係があるなんて思いもしなかった。
『その件も含めて、近いうちに食事でもしながらゆっくりお話しませんか。あなたとの約束もまだ果たせていないし』
「えっ……」
彼の素性を知る前に約束していたとはいえ、派遣先の社長と食事だなんて気後れしてしまう。返事に困っていると、新井さんが先に口を開いた。
「また連絡します。今週の金曜日の夜、空けておいてください。それじゃ」
「あの、新井さん⁉」
返事をためらっていたのに気づいたのか、新井さんはそれだけ言うと電話を切ってしまった。
『僕です、新井です。覚えてらっしゃいますか』
「……もちろん」
発した声は、かすかに震えていた。緊張しているのが伝わったのか、スマホの向こう側で、新井さんがフッと微笑んだような気配がした。
そうだ、せっかく向こうから連絡をくれたんだ。まずはあの日行けなかったことを謝らなくちゃ。
「あの、先日は申し訳ありませんでした。色々あって、新井さんとの約束を忘れてしまって……」
『そのことはもう気にしないでください。潮月さん、ライブラリーに伝言を残してくださったでしょう?』
「……ええ。それじゃ、この番号は」
『優子さんから教えてもらったんです。職権乱用して手に入れたわけじゃないので、どうぞ安心してください』
やはり新井さんは、私が受付にいることに気がついていた。
「新井さん、この会社の方だったんですね。すみません、私何も知らなくて」
考えてみれば、派遣先の社名は新井物産だ。でも、まさか新井さんに関係があるなんて思いもしなかった。
『その件も含めて、近いうちに食事でもしながらゆっくりお話しませんか。あなたとの約束もまだ果たせていないし』
「えっ……」
彼の素性を知る前に約束していたとはいえ、派遣先の社長と食事だなんて気後れしてしまう。返事に困っていると、新井さんが先に口を開いた。
「また連絡します。今週の金曜日の夜、空けておいてください。それじゃ」
「あの、新井さん⁉」
返事をためらっていたのに気づいたのか、新井さんはそれだけ言うと電話を切ってしまった。