これを愛と呼ばぬなら

 仕事に追われるうちに、金曜日を迎えた。新井さんはまた連絡すると言っていたけれど、実はまだなんの音沙汰もない。

 電話ではああ言っていたものの、都合が悪くなった? ……それとも、意外なところで再会した私のことを揶揄っただけ?

 まさか、新井さんがそんなことをするわけない。つい頭をもたげる妄想を、心の中で慌てて打ち消した。


「美沙ちゃん、今日どうしたの?」

「えっ、何かやらかしましたか、私?」

「ううん。そうじゃなくって、なんだが妙にソワソワしてるっていうか」

「……すみません」

 朝から落ち着かないでいるのを、依里子さんに見抜かれてしまった。

「週末だし、仕事の後で約束でもあるの?」

「ええっと、まあそんな感じなんですけど……」

「ひょっとしてデート? やっぱり、美沙ちゃんたら彼氏がいたのね」

 美沙ちゃんかわいいもん、なんて言ってうんうん頷く依里子さんに、慌てて首を振る。

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