これを愛と呼ばぬなら
「ち、違います! 彼氏なんていません」
「え、そうなの? じゃあ合コンとか?」
「そういうのでもなくて……」
まさかこの会社の社長と食事に行くんですなんて、依里子さんに言えるはずがない。どう説明したものかと考えていると、依里子さんがピシッと姿勢を正した。つられるようにして、私も正面を向く。
「あ……」
ロビーに姿を現したのは、新井さんだった。思わず、心臓が跳ねる。
新井さんは、いつも一緒にいる中條さんという男性秘書を連れていた。ビルの外に社長専用の車が停まっているから、これから外出なのだろう。
そのまま車に乗り込むのかと思いきや、こちらに向かって歩いてくる。受付カウンターの前で立ち止まると、新井さんは依里子さんと私を交互に見て微笑んだ。
「駒井さん、潮月さん、お疲れさまです」
「お疲れさまです」
内心の動揺を精一杯押し隠して、新井さんに向かって一礼する。反対に依里子さんはいつも通りの麗しい笑顔。プロフェッショナルだ。
それに、新井さんも。雲の上の存在なのに、受付の派遣社員の名前までちゃんと覚えているなんて、なんだか感動してしまう。
「どうですか最近は。何か困ったことはありませんか?」
「はい、万事順調です」
これまでも、こうして受付に声をかけてくることがあったのかもしれない。依里子さんは慣れた様子で新井さんに答えている。
「え、そうなの? じゃあ合コンとか?」
「そういうのでもなくて……」
まさかこの会社の社長と食事に行くんですなんて、依里子さんに言えるはずがない。どう説明したものかと考えていると、依里子さんがピシッと姿勢を正した。つられるようにして、私も正面を向く。
「あ……」
ロビーに姿を現したのは、新井さんだった。思わず、心臓が跳ねる。
新井さんは、いつも一緒にいる中條さんという男性秘書を連れていた。ビルの外に社長専用の車が停まっているから、これから外出なのだろう。
そのまま車に乗り込むのかと思いきや、こちらに向かって歩いてくる。受付カウンターの前で立ち止まると、新井さんは依里子さんと私を交互に見て微笑んだ。
「駒井さん、潮月さん、お疲れさまです」
「お疲れさまです」
内心の動揺を精一杯押し隠して、新井さんに向かって一礼する。反対に依里子さんはいつも通りの麗しい笑顔。プロフェッショナルだ。
それに、新井さんも。雲の上の存在なのに、受付の派遣社員の名前までちゃんと覚えているなんて、なんだか感動してしまう。
「どうですか最近は。何か困ったことはありませんか?」
「はい、万事順調です」
これまでも、こうして受付に声をかけてくることがあったのかもしれない。依里子さんは慣れた様子で新井さんに答えている。