これを愛と呼ばぬなら
「潮月さんは、もう慣れましたか?」
「はい、なんとか……」
「そう。潮月さんも困ったことがあったらいつでも言ってください」
私達のことまで気にかけてくれるなんて。どうしたって、以前いた保育園の園長と比べてしまう……。
「ありがとうございます」
感謝を込めて頭を下げると、新井さんは柔和な笑みを見せた。
「お話し中失礼。駒井さん、来週の会合の件ですが……」
中條さんが依里子さんに話し掛け、二人で軽い打ち合わせを始めた。新井さんは私を見て、少し表情を緩める。
「スマホは見た?」
「スマホですか? 業務中は持っていないので」
スマホなら、更衣室の鞄の中だ。誰に言われたわけでもないけれど、カウンターの中でスマホをいじるのは印象が良くないと思い、持って来ていない。
「なるほど、それで」
納得したといった感じで頷くと、新井さんは少しこちらに体を傾けた。
「会社を出る前に、メッセージを確認してくださいね」
「え……」
聞き返そうとした私を、少しだけ強い視線で封じる。
「社長、お待たせしました」
「ああ、行こうか。それじゃ、二人ともよろしくお願いします」
中條さんに頷いて、私と依里子さんに片手をあげる。
「いってらっしゃいませ」
あっという間に社長の顔に戻ってしまった新井さんを、私はどこか複雑な思いで見送った。
「はい、なんとか……」
「そう。潮月さんも困ったことがあったらいつでも言ってください」
私達のことまで気にかけてくれるなんて。どうしたって、以前いた保育園の園長と比べてしまう……。
「ありがとうございます」
感謝を込めて頭を下げると、新井さんは柔和な笑みを見せた。
「お話し中失礼。駒井さん、来週の会合の件ですが……」
中條さんが依里子さんに話し掛け、二人で軽い打ち合わせを始めた。新井さんは私を見て、少し表情を緩める。
「スマホは見た?」
「スマホですか? 業務中は持っていないので」
スマホなら、更衣室の鞄の中だ。誰に言われたわけでもないけれど、カウンターの中でスマホをいじるのは印象が良くないと思い、持って来ていない。
「なるほど、それで」
納得したといった感じで頷くと、新井さんは少しこちらに体を傾けた。
「会社を出る前に、メッセージを確認してくださいね」
「え……」
聞き返そうとした私を、少しだけ強い視線で封じる。
「社長、お待たせしました」
「ああ、行こうか。それじゃ、二人ともよろしくお願いします」
中條さんに頷いて、私と依里子さんに片手をあげる。
「いってらっしゃいませ」
あっという間に社長の顔に戻ってしまった新井さんを、私はどこか複雑な思いで見送った。