これを愛と呼ばぬなら
「……ありがとうございます」

「何を言ってるの。お礼を言うのは俺の方だよ。ありがとう、潮月さん」

「ふっ……」

 ふいに、涙がこぼれた。なぜだろう、新井さんの言葉で、今までの私の罪が許されたような気がした。

 自分がいるせいで、周りの人が皆不幸になる。そんな思考が気のせいだとは思えないほど、今まで色々なことがあった。

 新井さんはきっと、辞めざるをえなかった以前の仕事のことで、積もるものがあったのだと思ったのだろう。涙を止められない私を、ただ黙って見守っていてくれた。


 ようやく泣き止んだのは、それからしばらく経ってからだった。運よく私たち以外に客はおらず、薮内さんも気を利かせてくれたのか、新井さんが席を立つまで私達を放っておいてくれた。

「すみません、せっかく誘っていただいたのに、こんな」

「気にしないで」

 申し訳なくて謝る私に、新井さんは首を振る。

「ところで潮月さん、まだ時間は大丈夫?」

「はい、大丈夫ですけど」

仕事が終わってすぐ出てきたおかげで、まだそんなに遅い時間ってほどでもない。

「それならよかった。実はあと一ヶ所付き合って欲しいところがあるんだけど、いいかな」


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