これを愛と呼ばぬなら
「藤見悠祐くん、お迎えでーす」
「はーい、今行きます。悠祐くんよかったね。お迎え来たって!」
いつもは一番にお迎えが来る悠祐くんが、特に保護者からの連絡もなく、今日に限って最後まで残っていた。悠祐くんもさすがに不安になってきたのか、心細さが表情に出始めていたので、私もホッと息を吐く。
通園鞄と帽子を身に着けさせて、手を繋いで玄関へと向かう。
「あっ、パパだ!!」
悠祐くんはホールに立つ男性の姿を見つけると、私の手を離してパッと駆け寄り、男性に抱き着いた。三十代半ばくらいの、いかにもやり手のビジネスマンといった感じの人だ。お母さんの代わりに、なんとか仕事の都合をつけて、迎えに来てくれたのだろう。
「悠祐~、ごめんな遅くなって」
ぎゅうっと抱き着く悠祐くんの頭を、お父さんがぐりぐりと撫でる。仲の良さそうな様子に、つい目を細めてしまう。笑みを浮かべたまま二人に近づいて、お父さんに声をかけた。