【短】恋愛ピュアリズム

ぱしゃん!

立ち止まってる私に気付いた尚斗が、こっちを向いてムスッとしながら戻ってきた。


「紗綾?何してんだよ?マジで遅刻すんぞ!」


「先に行けば。私はもう遅刻でもいい」


「あー?何怒ってんだよ?」


「うるさいな!あんたが行かないなら私が先行く!」



そう言って、尚斗の横をすり抜けようとしたら、ぐいっと手を掴まれた。


「いった!何すんのよ!」


「お前が悪いんだろ」


「なんでよ」


「…なんでもねーよ。ばーか」


そして、暫くの無言。

こんなにこんなに好きなのに。
いつも素直になれなくて、それが悔しくてきゅっと口唇を噛んだ。


「んな、顔してんなよ」


「……ばかはなおの方じゃん…」


「あ?」


「……なんでもない」


そう呟くと、掴まれていた手を半ば強引に解いて、私はてくてくと歩き出した。
< 5 / 14 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop