【短】恋愛ピュアリズム
ぱしゃん!
立ち止まってる私に気付いた尚斗が、こっちを向いてムスッとしながら戻ってきた。
「紗綾?何してんだよ?マジで遅刻すんぞ!」
「先に行けば。私はもう遅刻でもいい」
「あー?何怒ってんだよ?」
「うるさいな!あんたが行かないなら私が先行く!」
そう言って、尚斗の横をすり抜けようとしたら、ぐいっと手を掴まれた。
「いった!何すんのよ!」
「お前が悪いんだろ」
「なんでよ」
「…なんでもねーよ。ばーか」
そして、暫くの無言。
こんなにこんなに好きなのに。
いつも素直になれなくて、それが悔しくてきゅっと口唇を噛んだ。
「んな、顔してんなよ」
「……ばかはなおの方じゃん…」
「あ?」
「……なんでもない」
そう呟くと、掴まれていた手を半ば強引に解いて、私はてくてくと歩き出した。