心の奥でずっと君を探してる
君の隣で笑っていたい。
又葉と出会って何ヵ月がたって肌寒くなってきた。


今日は特に天気が悪く寒い日だった。


給食準備中。


私は一人席であったかいスープのお皿を両手で握って冷えている手をあたためていた。


給食中は近くの人と席をグループにしていて斜め前には又葉の席がある。


給食の時間だけは努を挟まないで二人で話せる。

真正面に座っていないことも逆にすごく話しやすかった。


「ひゃっ。」

ほっぺに冷たいものが当たって思わず声をあげる。

「はい。牛乳。お前自分に配り忘れられてたのをいいことに知らんぷりして飲まないつもりだっただろ。」



「もう、寒いんだから牛乳つけないでよ。鳥肌たったじゃん。ほら。」


と言って又葉に腕を見せる。

「ほんとだ。ってかそんなことより早く牛乳受けとれよ。」

又葉はそういうと牛乳を私の机の上に置いた。


「余計なことを。」


牛乳をにらみながらため息をつくと

「だから、お前はちびなんだよ。」

と私の頭ポンポンと叩く。

ばか。頭さわんないでよ。なんか知らないけどあんたに触られると心臓がおかしくなるんだから。


「まだ、成長期が来てないだけだし。これからぐんぐん伸びるんだから。それと、牛乳飲んでたからっといって身長が伸びるとは限らないんだからね。」

恥ずかしさをまぎらわすように怒って言った。


「まぁまぁ、そんなむきになんなって。」

と言ってクスクス笑う。


あーーー。もうムカつく。

なんで、こいつはこんなにいつも余裕で私は余裕がないんだろう。



、、、、。

いや、そうだよね。

私はあいつを意識してて、

でも、又葉は私の事なんて普通にクラスメートの一人としか認識していないんだろうな。


ちょっとしんみり考えごとをしながらぼけーっとしていると

斜め前から叫び声が聞こえた。

ビックリして見てみると

又葉のズボンにカレーうどんのカレーがダイナミックにこぼれていた。

なんか笑っちゃいけないかもしれないけど


目を真ん丸にして口をぽかーんと開けてなにも言えずにいる又葉がおかしくておかしくて思わず笑ってしまった。

「ごめん!!今すぐ拭くから!ほんとごめん!」


カレーの丸缶を転んで思いっきりぶちまけてしまった女の子が泣きそうになりながら又葉に謝る。

ヤバイ、、、。笑ってはダメだったのかもしれない。


「えっと、大丈夫?足いたくない?」

私は何も言えずにいる又葉の代わりに女の子に声をかけた。

「私は全然大丈夫なんだけど又葉にカレーぶっかけちゃったしそれに、みんなに配る前にやっちゃったからカレーうどんなのにどうしよう。」

女の子は頭が真っ白になっててもう何も考えられない感じだ。

あ、やばい。

目からは涙がこぼれそうだ。

「ぷっ。うは。ははははは。」


おもっきり笑い出したのは又葉だ。

ヤバイ。こいつ頭おかしくなったのかな。


「又葉?」

「あー、もう。瑠奈最強。俺う○こ漏らしちゃったみたいじゃん。しかもぴー○ーの」


「ちょっとバカ。神聖なカレーをそんなものに例えるなよ。」

「クスっ。フフ。」

振り返ると笑顔になっている瑠奈がいた。


ほっ。良かった。

「瑠奈はとりあえず、先生にこぼしちゃったこと伝えてから新しい雑巾をもらってそれで又葉を拭いてあげて。ごめん。みんなも手伝って。うちは今から配膳室に行ってあまりが無いか聞いてくる!」

「俺は?」

「又葉はそのべったりついたカレーを教室に広げないようにじっとしてて。」


「了解ー」

「じゃあ、いってくるからよろしく!」

「う、うん。」

瑠奈がこくんとうなずいた。





「手を合わせてください。いただきます。」


カレーのあまりは配膳室には無かったけど、他のクラスのあまりをかき集めてなんとかみんなのカレーは用意できた。


「やるじゃん。優羽。」

「あったり前!」

ピースを又葉に向ける。

又葉は顔をくしゃしくゃにして笑ってあたしの頭をこれでもかって言うほど撫でる。

「もう、ボサボサになるからやめてよ。」

「はは、なんかお前たぬきみたいだな。」

「な、たっ、え?」

いきなり何を言い出すかと思ったらたぬきって、女子にたぬきって、、、ありえない。

ショックを受けてる私を見てもう一度いつものくしゃくしゃな笑顔とは違う顔で笑う。

その笑顔がなんだか心の奥に染みた感じがして

何も言えなくなる。

それはまるで私のことをすごく大事に思ってるような愛しく思ってるような、

そんなこと思うのは多分、いや、絶対自惚れだと思うけど、

そんな笑顔に見えてしまって

もう顔が見れなくなる。

恥ずかしさを隠すためにカレーうどんをすすると又葉も下を向いた感じがしてまた又葉を見ると又葉も顔をあげて

視線がぶつかる。

二人で顔を真っ赤にしながらなんかもう笑うしかなくて、二人して意味もなく笑っていた。

給食のカレーうどんをすするのがなんかはずかくしくなってきて上手くすすれずにいる私を見て又葉はバカにしながらも

そんな私をずっと見てくる。

「ほら、早く食べないと時間なくなるよ。」

「言われなくても食べるし。」

と又葉は言って勢いよくうどんをすするとカレーはあたりに飛び散り

「あちっ!」と顔をゆがめる。


「もー、汚いな。もっとお上品に食べなきゃ。」


笑いながら言うと

「うるせーな。お前」と顔を真っ赤にしてふてくされたような表情をする。


そんな何気ない表情の変化でさえずーっと見ていたいと思った。

そんな事を思っている自分がなんかおかしくて自分じゃないみたいだと思った。


その時はこんな毎日が平凡に続いてくれてさえいればいいと思っていた。

そしてこの時はまだ『この人いいなー。』っと言う軽い気持ちだと思っていた。

今までの恋愛と同じような。

ただ、いままでとは違って誰にも話したくはならなかったし。

好きな人にはまだしたくなかった。

ほんとにほんとに特別だった。

又葉にとって女子の中では一番仲の良い友達。その立場を守っていたかっただけだったのかもしれない。

実際又葉はあまり女子と話すほうではなかった。

いつも男子とばかりつるんでいて、あまり又葉の事を好きな人も小学生の時から聞いたこともなかった。


だからこそなんの心配もしていなかったし、そんなこと自体考えてもみなかった。

このまま学校で会って当たり前のように笑って話す事ができなくなるなんて思いもしていなかった。





あのときの私の当たり前は



今は夢。そう、遠い夢。



実際に過去にあの人と笑いあって当たり前のように話していたことすら夢だったんだと思うくらいに。





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