きみの見える景色には桜とわたしであってほしい。
「ちょ、ちょっと待って！」


わたしの頭で考えたプランはだいたい、詰めが甘い。


わたしの好きな人を唯一知っている親友をキャスティングしたのが、間違いだったのかもしれない。


彼女はかなりマイペースで、いつも我が道を行ってしまうから。


まあそんなところも好きで、憧れている部分でもあるんだけど。


彼女はわたしが本を返却するのを待たずに、図書室の奥へと、消えてしまった。


ひとりぼっちになってしまったわたしは、あっという間に弱気になっていった。


入り口に入ってすぐのカウンターの向こう側に彼がいるのが見えた。


姿を見ただけでドキドキしてしまって、すぐに目をそらしてしまう。


中１の時の偽物の恋は、やっぱりニセモノだったんだなぁ、と実感する。


本当に好きな人を目の前にして、平常心で居られるわけがない。


いつもは大人っぽいのに、笑ったときだけ幼くなるのが可愛いだなんて、言えない。


まさか、彼をこんなにも愛おしく想う日が来るなんて、思っていなかった。


「・・・って、何恥ずかしいこと考えちゃってるんだろう・・・」


頬を赤くさせているわたしが、一瞬で想像できてしまった。


でもここで引き下がるわけにはいかない。


中身なんて全く知らない本をぎゅっ、と握りしめてわたしは歩みを進めた。
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