いちごミルク、片想い。
そして私は今日もいちごミルクを買う。
いちごミルクを手に取るたび、
蘇るあの日のシチュエーション。
足音も
弧を描いて舞ういちごミルクも
少し低い君の声も
私に笑いかけた、君の無邪気な笑顔だって。
「好き、だなあ…」
ふと漏れたそんな声に口をパッと手で覆う。
心臓はいつの間にかトクントクン、
と音を立てていて。
顔は、火が出そうなくらい熱い。
……ああ、バカだ。
なに一人で赤くなってるんだろう。
カモフラージュでもするように、私は手元のいちごミルクをグイッと口に運ばせた。
だけど、その、瞬間。
ドンッ、と肩に伝わる衝撃。
フラつく体制を必死に整えてはみたものの、
私はあろうことか、そのままーー
「ったぁ…」
尻餅をついてしまった。
「あ、スイマセーン」
聞こえたそんな声に、ああ、またか、と。
私は転ぶ運命なのか、と。
あの日と同様、いちごミルクは真っ白なフローリングの床をピンク色に濡らして。
「惨め、だなあ…」
あの時のように、ならないのだろうか。
願ってばかりじゃ何も始まらないなんて、
わかってる。
何も変わらないなんて、わかってる。けど、
…だけど、
あの時のように、なってくれれば。
そんな。
都合のいいことなんて、あるわけーー
「……あ」
ーーなかったはず、なのに。
「ーーっ…」
聞き覚えのある、そんな愛しい声に顔を上げれば、バチッと確かにぶつかる君との視線。
そして、
君はあの時のようにまた、
私に無邪気に微笑みかけて。
「…また、落としたのかよ」
Fin.