【短】片想いのはじまりは、
「わ、私帰るね」
「え、ああ、うん」
「今更だけど、こんな道路の真ん中で立ち話しちゃったね」
「だな。ま、いいじゃん?ここいつも静かだし」
こうやってくだらない話に合わせてくれるあたり、やっぱり優しい人なんだと思う。
もっと話していたかったけど、これ以上いると私ダメになりそうで。
それなのにまだ背を向けることが出来ないでいる。
そんな自分に呆れた。
なにか、話題探しもしている自分にも呆れるし。
このまま時間が止まればいいのにって思ってしまうわがままな思いにも呆れる。
「俺さ、またこの町で暮らすことになったから、また会おうな!」
「うん」
「それと、春川さんを知ってた理由なんだけど」
さっきはごめん、と続けて言う君は照れくさそうに笑う。
「俺も友達から聞かされてたんだ春川さんのこと」
「そうだったんだ」
「そ。そゆこと。だから春川さんのこと……知ってたんだ」
ふわりと笑うその裏にはどんな想いが込められているのか私は知らない。
でもどことなく悲しそうにみえるのは気のせいかな。