放課後音楽室
「……あ、バイバイ、宇崎さん」
 
手を振られたから、私も片手を上げて、「バイバイ」と努めて穏やかな声で返した。
でも、絶対変なふうに思われたはずだ。

「ちょっと、ホントに帰るから。相良くんは美月と美術室ででも話しとけば?」
「は? なんで笠間ちゃんが出てくるの?」
「付き合えば? お似合いだよ」
「付き合ってほしいんだ?」
 
相良くんのほうを半分睨むように見ると、彼はいつもの得意げな顔で、
「そのほうが自分に都合がいいからでしょ?」
と言った。
 
なぜか、目の奥と鼻の奥に細い痛みを感じて、私は再度彼のスネにバッグをあててから、無言で校門へと歩き出す。

「……ってぇ」
 
背後から聞こえる彼のうめき声にも振り返らず、私はずんずん進んでいった。
下唇を噛み、ひきつく頬をなだめるように手の甲を押しあてる。
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