放課後音楽室
「お前さ、俺に会いに来たの? それともナンパしに来たの?」
「もちろん、ナン……彰浩に会いに」
「なんだよ、ナン彰浩って」
 
ふたりの息の合ったかけ合いに、小さい友人さんが「ハハッ、バカだバカ」と笑う。

「いいだろ、お前のピアノの腕前をだな、俺は……」
「だから」
 
今度は耳を引っ張った相良くんと、「イテテッ」と言っている友人さんを前に、私は、
「知ってるよ」
と口を挟んだ。

相良くんが私の目を見る。
今の今まで冗談を言っていたような目とは、色味が変わったような気がした。

「なにを?」
「ピアノのこと。ホントすごいよね」
「は?」
「そーなのよ、宇崎さん。コイツね……」
 
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