はちみつ、ちょっとだけ(完)
みるくとはちみつ


店と店の間の路地をそっと通って


左に曲がる。そのまままっすぐ 木の後ろ。


小さな花壇のすぐ横の 小さな店。


そこが私のお気に入りの場所。


ーチリン


ドアを開けると 心地のいい鈴の音がなる。

そろっと入っていつもの席へ。

窓から外の木が見えて、まるで店の名前そのもの。

わたしのお気に入りの "ひみつきち" だ。


「あ、今日も来てくださったんですね。
いらっしゃいませ、京香さん」


落ち着くテノールボイスが聞こえた。


「こんにちは。嵐さん」

この店のバイトさんで、ピアノ演奏者の 嵐さん。苗字は知らないけれど 私の好きな人。

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