へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
目前にあるのは、鬱蒼と葉を茂らせた木々が不気味に揺れている深い森。
10歳のときにこの森で魔獣に襲われ、危うく命を落としそうになったという忌まわしい記憶が残る場所。
そしてこの森では、私の他にも数々の魔獣の目撃情報があって立ち入り禁止区域となっている。
どういうわけか夜と暗い場所を好む魔獣にとっては、光を通さないこの森は居心地が良いみたいで…。
人に襲いかかるような凶暴な魔獣が、うじゃうじゃといるらしい。
「この森を真っ直ぐ突っ切れば……学校までのちか道になる。もしかしたらギリギリ間に合うかも?」
普段は絶対に足を踏み入れない場所だけれど、遅刻を免れるためには……通るしかなさそうだ。
ざわざわと音を立てながら揺れる木々たちが、一筋の光すらも通さない暗い森へ、まるでおいでと言っているように見える。
ごくりと息を飲みこむ。
やっぱり森を通るしかない……かぁ。
怖いなぁ、また魔獣に会ったらどうしよう。
今度こそは噛み殺されてしまうかもしれない。
でも…森を通らなきゃ間に合わない。
大丈夫、大丈夫……。
今の私は、7年前の私とは違うんだ。
魔獣に遭遇しても、魔法を使って攻撃することができるんだから!
「よーし……悩んでる暇なんかない!」
朝なのに夜のように暗い森に向かって、意を決して駆けだした。