へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
翌朝の7時30分。
1時間前に起床した私は、登校準備を済ませ、エイミーと一緒に1階の食堂で朝食をとっていた。
「メイベル、ちょっといいかしら?」
60人は座れるながーい木製のテーブルに向かい、ライ麦パンにイチゴジャムを塗っていると、ちょんちょんと左肩を叩かれた。
パンを片手に振り返ると、そこには無表情のエリノア寮長が立っている。
「え……あ、はい。どうしたんですか?」
もしかして昨夜、寮を脱走したことがバレたの?
エイミーは、私の顔にそっくりな枕を使ってなんの問題もなく、エリノア寮長を誤魔化すことができたと言っていたけど。
隣でコーンスープを飲んでいるエイミーを横目で見ると「やっぱりバレてたのかな?」と小声で言いながら頭をかいている。
まさか本当に脱走がバレてしまった?
それとも、こっそり魔獣を寮の部屋に住まわせていることを知られたとか?
「ヴィクトル校長が、あなたにお話があるそうよ。登校したらすぐに校長室に行きなさい」
「……はい、わかりました」
私が首を縦に振るとエリノア寮長はさっと背を向け、長い黒髪のポニーテールを揺らしながら私の前から離れていった。
「ありゃりゃ、これはやっちゃったねーメイベル。見た?さっきのエリノア寮長のメガネの奥の瞳。冷めきってて怖かったよね!」
エイミーに「ごめんメイベル」と背中を叩かれた私の心中は穏やかではなかった。