へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
やだなぁ、怖いなぁ。
いくら校長先生が滅多に怒らない温厚な性格だと知っていながらも、校長室に呼ばれたことは初めてだから緊張がすごい。
「あれっ、メイベル。もう食べないの?パンをひとかじりしただけじゃないの。もっと食べなきゃ」
「はぁ……校長先生からの話しが気になって、ゆっくり朝食どころじゃないよ」
ほとんど手をつけていないライ麦パンとコーンスープ、サラダが乗ったトレーを手に立ちあがると。
まだ食べはじめたばかりのエイミーを残し、楽しげな笑い声と食器の音が騒がしい食堂を出た。
普段はエイミーと一緒に8時頃に寮を出るのだけれど、この日は20分も早く出ることにした。
「あれっ…?ルキ?」
校門をくぐり抜け、1階にある校長室に向かうためにまだひとけのない廊下を歩いていると。
つきあたりにある校長室の前に、黒色の長いマントを羽織った銀髪の男子生徒の後ろ姿が見えた。
はっとして振り返った男子生徒は、やっぱりルキだった。
「あっ、おはようメイベル。メイベルも校長先生に用事があるのかい?」
「うん、そうなんだ。そういうルキはどうして校長室の前にいるの?」
「話しがあるって呼ばれたから。もしかしてメイベルも?」
「えっ、ルキも⁉実は私も校長先生に呼ばれたの…」