へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


1番、という文字の隣に書かれていた名前はなんと、ルキ・ヴィクトルだった。

2番のライザがすべての魔獣を撃ち落とした秒数が30秒というのも驚異的なスピードだけれど。

ルキはその記録を遥かに上回る、わずか13秒という数字を叩き出していた。



「わぁ……ルキってばすごすぎる…」



エイミーから聞いた話しによると、ルキは火の玉を5つ出現させて、5匹の魔獣をほぼ同時に撃ち落としたっていう。

それは時間にするとほんの一瞬のことだったってエイミーが言っていたけど、13秒という数字は私の想像を遥かに超えていた。



私の隣には鬼と化したライザがいるということを忘れ、ついついそんな心の声を洩らしてしまった。



すると私を見下ろしたライザの獰猛な瞳と、ばっちり視線が重なり合わされた。



「うるせぇっ、このクソ万年最下位‼ぜんぜんすごくねぇよあんな奴っ!絶対にぶっ倒してやる‼」

「ひぃっ……‼」



ライザは荒々しい声を上げると、ガン、と勢い良く順位表の上から黒板を殴った。

一瞬にして空気が凍りついてしまった教室から、クラスメイトたちの声がぴたりと消える。




「くそったれ、1番はこの俺だってことを今に証明してやる」



静まり返った中で響いたのは、ライザの怒りの色を含んだ声。

ライザは黒いマントをくるりと翻すと、窓際の席でカーラと話しているルキの元へと真っ直ぐに歩きはじめた。

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