へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


私の方はルキが魔法でライザに傷つけられているところばかりを想像してしまって、大好物のパスタがなかなか喉を通らないというのに。

決闘だなんてそんな危ないこと、断ってしまえば良かったのに。



フォークを右手に持ったまま、そんなことを思った。



「だーいじょうぶだよ、メイベル。決闘って言っても、ライザくんを傷つけるようなことはしないから。ほら、せっかくの美味しいパスタが冷めるよ。早く食べな」



ルキはパスタを頬張ったまま、相変わらず陽気に笑っている。



「違うよぉ、私はルキの心配をしているのっ‼」



ルキはなんでこうも能天気なのよ…。

カサエル先生に睨まれたときだって顔色ひとつ変えなかったし、危機感というものはないの⁉

心配しているのは私だけで、当の本人は何も考えていないんだと思えば、だんだんとイライラしてきた。



「はぁ……もう、ルキはライザのことを甘くみすぎだよ。いったい何人のクラスメイトがライザに泣かされたことか」



私だってライザの被害者なんだから。

休み時間になると魔法を使ってよく水の入ったコップを宙に浮かし、私の頭でひっくり返すという意地悪は何度もやられた。



ふだんは仲がいいトールボットだって、下校途中にライザを怒らせてしまったのか両足を凍りづけにされて動けなくなっていたことがあった。



カーラに至っては、綺麗な金髪の縦ロールを魔法でチョココロネにかえられていた。

……これは、ちょっとだけ笑っちゃったけど。



他にもまだまだ被害者はたくさんいて、その余罪は数え切れないほどあるんだから。

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