へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
ライザの悪行を思い出せるだけ教えてあげた。
それでもルキは表情を変えることはなかった。
「心配はいらないよ、メイベル。パスタ、食べないなら俺がもらっちゃってもいいのかな?」
「んもう、ルキはさっきからパスタのことばっかり‼」
「はは、ごめん。パスタなんてこんなに美味しい料理があるんだなって。もしかしたら記憶をなくす前の俺は、パスタが好きだったのかも」
「あぁ、そっか…。ルキは記憶がなくなっちゃったんだもんね。ごめんね、わかってあげられなくて」
食べ慣れているものですら、記憶喪失のルキにははじめての味なんだ。
だからさっきから、ライザはそっちのけでパスタに夢中になっていたんだな、と思うとイライラしてしまったことに罪悪感を覚えた。
大きなため息をつきながら、パスタをフォークにくるくる巻きつけた。
「謝らなくてもいいよ。心配してくれてありがとう、メイベル。俺にもちゃんと考えがあるから大丈夫だよ。ごめんね、俺のことで悩ませてしまって」
そんなルキの屈託のない笑顔と温かい言葉が、私の強張った頬をゆるゆると綻ばせる。
「ううん……私こそ何もわかってなくてごめんね」
「俺もおかわりもらってくるから、ささっと一緒に食べよう。急がなきゃ昼休みが終わってしまうよ」
「あっ、本当だ‼5時間目の魔法の授業に遅れないようにしなきゃっ」