へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


うん……確かにサビーナが言っていたとおり、チョコチップが散りばめられていて美味しそう。

見た目は……ね。



恐る恐る口に運んでみる。



食べた瞬間、口いっぱいにまろやかな甘みがふわりと広がっていって……。

と、思いきや。



「なにこれっ⁉なんかしょっぱいっ‼ぺっ、ぺっ‼まずいよローリー!」



口いっぱいに広がるはずの甘みなんてものは皆無で、まるで海の水を舐めたようなしょっぱさに舌を刺激された。



思わず口からケーキの欠片を吐き出して「エイミーも食べてみて!」とまずいカップケーキを手渡してみる。



するとエイミーも「うわっ、激まずなんだけどっ‼」と吐き出し、創作主のローリーまでも「げぇっ、本当だ」と同じく吐き出した。



「あんた、もしかして塩と砂糖でも間違えた?それとも詠唱中に、海で泳いだときのことでも考えた?」



決してケーキを口にしなかったサビーナは、呆れ顔でローリーを見た。



ローリーはサビーナの冷めた目と視線が合うなり、げらげらと声を上げ笑いはじめた。


「塩と砂糖間違えたかな。ほら、うちのキッチンってさ、塩と砂糖が隣同士に置いてあんのよ。で、どっちが塩でどっちが砂糖か書いてないわけ!」



だからよく塩と砂糖を間違えてたんだよな、との悪びれた様子もない言葉にエイミーが「責任持ってぜんぶ食べなさいよ!」と、ローリーの口の中にカップケーキを無理矢理押し込んだ。

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