へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
ほんの少しだけ開いたままでいたドアを押し開けようと、ドアノブに手を伸ばしたときのことだった。
私の右手がドアノブに触れる前に、ドアがひとりでにガチャン、と大きな音を立てながら勢い良く閉まった。
ついさっきまではなかったのに、いつの間にやらドアノブに紫色の錠前がかけられている。
「なにこれ?どうやって外すの?これじゃあ外に出られないよっ」
すると背後からコツコツと、ローファーで床を踏む音と「兄の邪魔はさせない」という、サビーナの強い声が私の耳を抜けた。
「サビーナ!どうして魔法でドアを開けられなくするの?開けてよ、カサエル先生を呼ばなきゃ!決闘なんかするもんじゃない!」
「ドアの施錠は絶対に解かないわ。とにかく兄の邪魔は許さないから」
「どうして⁉ライザがケガをしてもいいの⁉」
「ライザはそんなヘマはしないわ。それに私はライザの双子の妹だもの、協力して当たり前だわ。わかったら外へ出ることは諦めなさい」
諦めなさいと言われたところで、素直に「わかった」だなんて言えれないけれど。
施錠されたドアを開けるには、サビーナがドアに施した魔法の錠前を壊さなければいけないんだ。
でもそのためにはサビーナがドアに施した魔法よりも、さらに高い魔力を持った魔法をぶつけて施錠を破るしかない。
そう、校門にかけられていた防衛魔法を、ルキが破ったときのように。
だけど私には、サビーナの強力な魔法を破るほどの高い魔力はない。
というか、この場にいる人でサビーナの防衛魔法を破れるのはライザとルキだけ。
「おい転校生、決闘のルールはさっき説明したからもうわかったよな?」
ドアの前で落胆していると、後方からライザの楽しげな声が響いた。