へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
もうダメだ……!
枯れ葉の中に顔が埋もれてしまった瞬間、ぎゅっと固く目をとじた。
「ん………あれ?」
急に魔獣の気配がなくなった…?
恐る恐る顔をあげてみる。
すると視界に飛び込んできたのは、私に向かって差し出された、抜けるように色の白い手。
「大丈夫?」
「うわっ‼だっ、だだだだ誰っ⁉」
私の顔を覗き込むようにしてしゃがみこむ少年と、ほど近くで目があった。
ハッと勢いよく立ちあがると、急いで2メートルくらいざざっと後退する。
「魔獣に追われていたようだね。ケガはない?」
しゃがみこんだまま私を見上げているのは、同じ歳くらいの見覚えのない少年だった。
シワのひとつもない真っ白なカッターシャツに、細身なシルエットの黒いパンツ。
それはフォルスティア学園の制服に似ているけれど、私は彼を校内で見たことは一度もない。
彼が私を魔獣から助けてくれた?
でも、どうやって?
大きくて凶悪な魔獣を、どんな手を使って一瞬で消し去ることが出来たの?
まず魔獣はというのは、魔法を使って攻撃をしなければ、消すことはできないんだ。
ということはこの少年も魔法使い?