へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
ドキドキが冷めないまま、乗客のいないバスに乗りこんだ。
整理券を私のぶんとルキのぶん、2枚をとるとそのうちの1枚を、隣に座ったルキに「はい、ルキのぶんだよ」と手渡した。
「ありがとう、メイベル。それにしても静かだね」
「あっ、うんっ、そうだね!フォルスティア学園の付近は山ばかりだから、民家もないし乗客は滅多にいないんだよ」
でも山を下りれば民家も増えてくるから、バス停に止まるたびに人が増えて賑やかになってくるよ。
と窓を向いているルキの横顔を見ながら説明すると、ルキは「なるほど」と頷きながら窓ごしに流れる景色を眺めていた。
「あっ、そうそう。実はね、今日はピーちゃんも連れてきたんだよ」
パンプスと同じ赤色のショルダーバッグのファスナーを開けると、中から真っ白でふわふわの綿雲のようなピーちゃんが飛びだしてきた。
「メイベルは本当に魔獣が好きなんだね」
ピーちゃんは私の膝の上からルキの膝の上に軽やかに飛び移ると、素早く肩まで駆けあがった。
ルキの頬に小さな身体を擦り付けて喜ぶピーちゃんはまるで、「会いたかったよぉ!」とでも言っているみたいでかわいい。
ルキはそんなピーちゃんを片手で撫でつつ、「くすぐったい」と笑っているし。
なんだか微笑ましかったからぷっと笑ってしまった。