へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする



「あはは、うんっ。魔獣は大好きだよ。でも、人を襲うような凶暴な魔獣は大ッキライだけどね」

「そっか、そうだね。メイベルは森で魔獣に襲われたんだもんな。怖かったよね」

「まぁ、魔獣を嫌いな理由はそれだけじゃないんだけどね」



私の7歳の誕生日会の夜を思いだしてしまった。

いきなり天井を突破って現れた魔獣のせいで、瓦礫に埋もれ亡くなってしまったパパとママのことを。



パパが私の周りに張り巡らせた防衛魔法の中で、泣きながら震えていた私の前には、全長で20メートルくらいはある白い大蛇のような魔獣。

私を見おろす蛇の目が、銀色に鋭く光っていたことが未だに忘れられない。



「何か……嫌なことでも思い出した?」

「あっ…うん。ちょっとね、魔獣に殺されたパパとママのことを考えていたの」



自分たちのことよりも、真っ先に私を守ってくれたパパとママ。

パパとママが守ってくれたから、私は瓦礫に押しつぶされることも魔獣に襲われることもなく、無傷で助けだされたんだもんね。



「パパとママに会いたくなってきちゃった…」



ルキに「辛かったんだね」と優しく背中に触れられ、目頭が一気に熱くなった。

視界を歪ませる涙を指で拭うと、心配そうに眉を下げているルキに笑いかけた。



「あははっ、ごめんね雰囲気を暗くさせてしまって!あーっ、マーグレーンにいったらまずはどこにいこうかなぁっ‼」



ルキは私が笑ったことで安心したのか、ほっと息を洩らし、「人が1番集まる場所が良さそうだね」と頬を綻ばせた。

< 146 / 292 >

この作品をシェア

pagetop