へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


バスが森に挟まれた白い小道を下ること20分。

右にも左にも木ばかりだった景色は途切れ、変わりに民家やビルがいくつも見えてきた。

マーグレーンへ行くには、この片側三車線もある広い道路をとにかく真っ直ぐ進まなくちゃいけないのだ。



そこからさらに20分も進めば、目に入る景色は20階建て、30階建ての巨大なビルばかりになってきた。



「ルキ、マーグレーンに着いたよ」



バスがマーグレーンのメイン通りに入った頃には、私とルキだけを乗せていたバスはぎゅうぎゅうになっていた。



「ビルと人と車が多いね。向こうにあるレンガ造りの建物は何?縦にも横にも大きいから城かな?」

「ううん、あれは時計台なの。マーグレーンで1番人気の観光スポットだよ」

「へぇ。離れていてもあれだけ存在感を放っているから、近くで見ればその全貌に圧倒されるんだろうな」

「じゃあ目の前で見てみる?今から4駅目のバス停が、あの時計台の前なの」



ルキは窓ごしに軒を連ねるビルを眺めたり、忙しなく行き交う人々や車をきらきらした目で見ながら「行こう」と頷いた。



バスはビルに囲まれた交通量の多い道路を走りながら『図書館前』や『美術館前』や『飲食店街入り口』で停まっては客を降ろし、また乗せてを繰り返している。

そんな中で私とルキも大勢の客に混ざり、『時計台前』でバスを降りた。

< 147 / 292 >

この作品をシェア

pagetop