へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


ルキはバスを降りると「綺麗な建物だ!」と目を輝かせながら、無邪気にはしゃぐ子供みたいに時計台へ走り寄って行った。

私は時計台の前に集まる人混みに消えていくルキを、「ちょっと待って!」と懸命に追いかける。



ルキってば大人っぽいように思えて、こんなふうにはしゃいだりするんだなぁ…。

なんだかかわいい。



「レンガの城に、それを囲む緑に、湖の周りのベンチで身体を休める人々。うん、いい眺めだね」



時計台の真下まできてようやく足を止めたルキに追いついた頃には、息がすっかりとあがってしまっていた。



「ここは大きなビル群から離れた場所だから、街の中心部にはない和やかさがあるよね。まぁ、相変わらず人は多いけど」



かつては城として使われていたという時計台をぐるりと取り囲むブナの木。

その向かいには海のように広い湖があって、白鳥が泳いでいたり、釣りを楽しむ人やカヌーを漕ぐ人の姿も見える。

その湖の周りには綺麗に手入れされている芝や、ところどころに設置された木製のベンチやあずまやもある。



街の喧騒から離れた時計台の周りには、ビルばかりの中では感じられない自然を楽しもうと、いつ来ても大勢の人で賑わっている人気スポットだ。



ルキは「確かに和むね」と笑いながら、「じゃあ、俺を知る人がいないか調査をしてくる」と、時計台の真下に集まるツアー客の元へ歩きはじめた。



「それなら私も行くよっ、ルキ!一緒に聞いて回ろう」

「ありがとう、メイベル。助かるよ」



私とルキは肩を並べ、世界各地から訪れているであろう50人ほどのツアー客に声をかけた。

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