へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
なんだか急に涙がこみ上げてきて、顔を俯ける。
ルキは下を向いて歩く私の隣で、ペースを変えることなくゆっくりと歩を刻む。
「そんなことはない。メイベルは優しい子だよ。俺のことをたくさん助けてくれて、今だって俺のために涙を流してくれているんだから」
柔らかな声が、静寂に包まれた夕暮れの小道に響く。
顔を俯けたままだからルキがどんな表情をしているのかはわからないけれど、きっと私をみおろしながら笑っているのかもしれない。
「だから泣かないで、メイベル。メイベルが泣いていたら俺も悲しいよ」
そう思って涙に濡れた顔をあげると、ルキはやっぱり私をみおろしながら微笑んでいた。
「だってルキと離れたくないんだもんっ‼私はルキのことが好き……だからずっと一緒にいたいのっ!」
寮の深緑色の屋根が木々の間から見えたところで、私はルキを見つめたまま足を止めた。
胸がバクバク鳴りはじめる。
おまけに顔も熱くなってきた。
「え…?」
私より3歩前に出たところで、ルキもつられるように足を止め振り返った。
ルキはびっくりしているみたいだ。
「ルキは私のこと、どう思っているの……?」
ルキの丸々と見開かれた目は私からほんの少しも逸らされることはなくて、それがまた私の羞恥心を煽る。