へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「レックス、あなたは何か勘違いをしているわ。その手帳は私の物ではなくて、マーグレーンで魔導警官をしていた私の双子の妹の物よ」



校長先生に双子の妹がいたのか、それは知らなかったな。

しかも魔導警官だなんてびっくりだ。



魔導警官というのは、魔力を持った警察官のことだ。

あらゆる魔法を駆使し、あらゆる事件を解決する国民のスーパースターなのだ。



「確かに叔母さんだったら…筆跡が似ていても不思議じゃないな。それなら、レックスの魔獣は新しい生き方を見つけたってどういう意味なんだよ‼」



またレックスさんの乱暴な声が飛び交う。



盗み聞きなんてしているのがバレたら、きっと私もあんなふうに怒鳴られるんだろうな、と恐怖に駆られながらも。

ふたりの会話がどうしても気になって、ドアから身体を離せなかった。



「残念だけどそれは妹にしかわからないことでしょう。妹はもう死んでいるのだから、理由を知るのは諦めなさい、レックス」



って、校長先生の妹さんはもう亡くなっていたのか…。

魔導警官には幼い頃に魔獣から救われたことがあって以来憧れを抱いているから、一度校長先生の妹さんに会いたいと思ったのに。

小さなため息を洩らすと、ドア越しに「自分で調べるからもういい‼」とレックスさんの怒声と、ドアに向かう足音が聞こえてきた。



急いでドアから飛び退いた私と、ドアを勢い良く押し開けたレックスさんとの視線が重なり合う。

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