へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする


「うわっ、びっくりした‼なんだよメイベルかよ、こんなところにぼーっと突っ立ってんなよ」

「あはは……おはようございます、レックスさん。ドアをノックしようとしたら急に開いちゃったからびっくりして…」



咄嗟に口から出た嘘だけど、レックスさんを誤魔化すには十分だったようだ。

レックスさんは不機嫌に「あぁそう」とだけ洩らし、颯爽と私の前から離れていった。



良かった、盗み聞きしていたことがバレなくて。

ほっと胸を撫でおろしながら、遠ざかっていく背中を見つめていると。

ドアが開いたままの校長室の中から「用があるんでしょ?お入りなさい」と校長先生の声が聞こえてきた。



「失礼します…」



修羅場のあとだから空気が重たいな、と気まずく感じながらもおずおずと校長室に入った。



「見苦しいところを見せてしまってごめんなさいね。あの子、ものすごく短気で荒々しいの」



校長先生は私に「ソファーに座りなさい」と言いながら、レックスさんが倒したであろう机の上に置いていた木彫りの馬のオブジェや、白い電話機やらを定位置に戻している。



「あ……いえ、私はぜんぜん大丈夫なんですけど…。その、大丈夫ですか?」



いつ見ても朗らかに笑っている校長先生が、暗く沈んだ表情をしていたからそう言わずにいられなかった。

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