へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
少年の右手の平から鮮やかな青い光が放たれた。
かと思えば眩い光は、瞬く間に青い炎になった。
少年の手の平で、青い炎が怪しく揺れる。
炎は風に吹かれたように手のひらから浮かびあがると、渦を巻きながらまっすぐに私へ向かって猛突進してきた。
「うわぁっ……!」
火炎放射器のような、勢いのある炎。
渦を巻きながら向かってくる様は、まるで巨大な龍のよう。
全身を覆い尽くすような巨大な炎に飲み込まれでもすれば…。
ううう……想像したくもない。
身を守るようにして、さっと腰を落とした。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。君を狙っているわけじゃないから」
「……えっ⁉私じゃない⁉」
「君の背後にいる魔獣」
恐る恐る目を開けると、青い炎は勢いを保ったまま私のすぐ横を通り抜けた。
そして拳ほどの大きさの黒い蝶にぶつかり、無残にも地へ落とされた蝶と共に炎も消えていった。
なっ……なに⁉
私の背後に魔獣?
「どんなに小さくても、魔獣は強力な魔法を使ってくることもあるからね。簡単に背後をとられないように、これからは気をつけた方がいい」
「……」
まるで気配なんてなかったのに……。
まさか私の背後に、小さいながらも魔獣が潜んでいたなんて。