へなちょこ魔女は、ぎんいろの瞳に恋をする
校長先生は床にばら撒かれた資料を拾う手を止めると、深いため息をつきながら私の向かいのソファーに座った。
「あぁ……私としたことが、屋根裏に手帳をしまいこんでいたことを忘れていたなんて。あれは燃やして捨てるつもりだったのに…」
「えっ?あの手帳は、妹さんの物だったんじゃないんですか⁉」
身を乗り出しながら聞き返すと、校長先生は俯けていた顔をはっとあげた。
暗い顔はなぜだか一変して、にんまりとした明るい笑顔が浮かべられている。
「やっぱり……あなた、ドアの前にずっといて会話を盗み聞きしていたのね?」
校長先生の笑顔を見た瞬間、さっきまでの校長先生の沈んだ顔は演技だったんだと気付いた。
もしかして私がずっと前からドアの前にいたのではないかと推測をした校長先生は、私の反応を見るためにわざとため息を吐いたりなんかしていたんだ。
「ごめんなさい……実は聞いていました。本当にごめんなさい、校長先生」
盗み聞きしていたことを言うつもりは全くなかったのに、校長先生の策略にまんまとやられ、墓穴を掘ってしまった私は慌てて頭を下げた。
「それならもう、私の悩みを聞いてもらうしかないわね。いい?絶対に誰にも他言してはだめよ?」
そう言って校長先生は私を叱るでもなく、何か困ったように眉を下げながら話しはじめた。